日に日に夜が長くなってきました。

 

秋の声を聞くと、あかあかと燃える
火の傍が恋しくなってくるのは何故でしょう。
静かで深い、漆黒の夜のせいでしょうか。

今回は、そんな季節にふさわしく
当館のご夕食で楽しんでいただいている
囲炉裏のお話をすこし。

 

囲炉裏とは伝統的な日本の家屋にある火の元。
もともとは床を四角く切って中に灰を敷き詰め、
そこで炭や薪を燃やして、暖房や調理に使用した
生活に欠かせないものでした。

囲炉裏の原型は古く、縄文時代頃から存在していた
「炉」であると言われています。

 

やがて、竈(かまど)の発展とともに
西日本では次第にその姿を消していきましたが
夜が長く、寒さが厳しい東北をはじめとする東日本では
部屋の暖をとったり、採光に使ったりと、
特に農村部で近代に至るまで愛用されてきました。

 

煮炊きをし、家人が集まって食事をする囲炉裏は
家族団らんの場であったと同時に
客人をもてなす場所でもありました。

その用途で使われた囲炉裏では
灰を美しく整え、五徳(ごとく)と呼ばれる
金属の台に鉄瓶を置いて
客人のために熱いお茶を用意しました。

その究極の様式こそが茶の炉であり、茶の湯です。

 

 

いつの時代も囲炉裏端は、
人々が集い語らいを弾ませる
まさにコミュニケーションの中心。

その時代をよく知らない私たちにとっても、
囲炉裏の傍に座るだけで
ほっと心が和んでしまうから不思議です。

 

いまだ続くコロナ禍のなか、
囲炉裏は人と人とのつながりのやさしさ、
温かさという大切な何かを、これまで以上に
私たちに教えてくれているような、
そんな気がしてなりません。

また図らずも、その囲炉裏でお客様を
お迎えしている当館にとって、その意味は
とても大きなものだとあらためて感じています。

 

季節は豊穣の秋。
やまゆりの宿のお膳も色鮮やかな装いです。

一年で最も詩情あふれる景色に包まれる台温泉。
ご家族や大切な方と静かに過ごす
囲炉裏端での水いらずのひとときが
この秋一番の想い出になれば、うれしい限りです。

 

※掲載の写真はイメージです。